2017年7月の読書録

2017.08.12 Saturday 22:59
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    ミステリ読みたい周期みたいです。


    「バチカン奇跡調査官 闇の黄金」 藤木稟
    「赤に捧げる悪夢」 ミステリアンソロ お目当ては有栖川有栖の「砕けた叫び」、麻耶雄嵩「氷山の一角」

    「幻坂」 有栖川有栖 大阪の坂にまつわる幻想短篇集。ずっと見守っていてくれたひとに別れをつげる「真言坂」、芭蕉の最後を書いた「枯野」が印象的でした
    「水神」 麻生由美 今日われは君へかたむく自転する地球の春の上にかたむく
    「御手洗潔のメロディ」 島田荘司 IgE、SIVAD SELIM、さらば遠い輝き、ボストン幽霊絵画事件収録。濃かった。
    「御手洗潔のダンス」 島田荘司 山高帽のイカロス、ある騎士の物語、舞踏病、近況報告収録。御手洗につきあうのは三歳児をおいかけまわすようなものだなあと。
    「ダ・ヴィンチ 2016年4月号」 火村ドラマ放映後で、有栖川先生特集でした。
    「ダ・ヴィンチ 2016年6月号」 こっちは御手洗潔特集。星籠の海映画公開記念かな。

    「一匙の海」 柳澤美晴 雨の朝どこへも行けるさびしさに傘はちいさく世界を弾く
    「異邦の騎士」 島田荘司 サスペンス調でおもしろい!
    「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」 島田荘司 こどもにやさしい御手洗。

    「パラダイスィー8」 雪舟えま 愛たいとれいん、おやすみぼくの睡眠士、キッチン・ダンス、マジカル失恋給付金など収録。
    「斜め屋敷の犯罪」 島田荘司 新本格!ってかんじ。しびれます。
    「図書室で暮らしたい」 辻村深月 読書歴を知りたくて手に取ったのですが、子育ての話に手が止まった。

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    「水神」

    2017.08.07 Monday 15:02
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      「水神」 麻生由美

      「この世にいるところがなかったんです。」
      「もともとないじゃないか。」


      まひる野所属の歌人・麻生さんの第一歌集。
      北山さんがとても良かったとおっしゃっていました。
      紙上で拝見すると、抑えた筆致で隅々まで見つめているような方だなあと感じました。
      2017年6月詠草の「花の洞」がとてもすきでした。


      教壇に踏ん張つてゐる 眼の隅でさくら何やら満開らし

      あかときにみつしり白い花あしびああまた春に入らねばならぬ

      悲しくてとぢられぬ眼の幾千が見上げてをらむこの夜の闇

      さうでせう成果は誰か出すでせうわたしといへば鼻がいたくて


      物質に成れるわたくし一錠で止まつてしまふ落つる涙も

      ゆづり葉にゆづりゆづりと乗りたまひいかなる貌の神やまします


      今日われは君へかたむく自転する地球の春の上にかたむく



      第一章は教員生活での経験、日々のこと、大震災のこと、そして、ご自身の発癌について。
      教職と言うのは、大変なのだろうなあと教員の方の歌(歌人のなかで一番多い職業ってなにか知りませんけど、教員ってかなり多数を占めるのでは)を読むたびしみじみ思うのでした。
      思春期のこどもと毎日接するって想像以上のえれるぎーが必要なのだろうな。
      彼らの繊細な一面も、乱暴で残酷な一面も、どちらもびっくりさせられる。

      政治的運動、デモかな、に参加している一連も、
      不信感とか、自分の力の及ばない大きなものがなんだか愚かなことをしているようだと冷めた目線を感じる部分もありました。鼻がかゆくて、ってちょっと笑ってしまう。

      手術、その後の放射線療法の一連も、自身の肉体的精神的辛さをとつとつと語るわけではなく、
      薬一錠でとまってしまう涙だったり、そういう身体だったり、切り取られた癌の組織のゆくえをぼんやり思い描いてみたり、生の悲しみ苦しみから適度に距離をおいて詠んでいらっしゃるように感じました。

      最後に引用した歌は、なんだか好きで。
      地球は軸が傾いているから私たちみんな傾いているんですけれど、それを意識することはないですよね。
      それがふと思い浮かんだのか、「きみ」に、「春の上」に、かたむいていくわたし、と自分の身体(意識?)がふわふわと拡大して薄くなっていくようなイメージが心地よいです。「春」というのもいいのかも。


      二章以降、また折をみて書きたいです。
      二章は四国巡礼のときのもの、三章はふるさとや自身をはぐくんできたものたちに目を向けている歌が多いようでした。







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      一匙の海

      2017.08.06 Sunday 22:28
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        「一匙の海」 柳澤美晴 本阿弥書店


        第19回歌壇賞受賞の柳澤美晴さん第一歌集。

        雨の朝どこへも行けるさびしさに傘はちいさく世界を弾く

        さびしさの骨格のごとく積み上げるセブンスターの細い吸殻

        くちびるをわれの額に載せたまま髪の先まで眠るきみあり

        先端の欠けてしまったピペットの春のひかりを束ねて捨てる

        親指と距離を隔てる四本の指を悲しむ まして父親



        かたちをもたないものを形に表すとき、その人のその人らしさが出るような気がしますが、
        (その人のファインダー越しに世界を覗く感覚でしょうか)
        柳澤さんはひやっとするほど冷徹な視線をかんじます。
        前半はさびしさ、みたいなものがなんとなくつたわってくるのですけれど、
        仕事(養護教諭だそうです)をはじめ、思春期のこどもたちと触れ合う中での学校生活の中の閉塞感、幼いながら、いや幼いからでしょうか、他者を傷つけ、傷つく姿を丁寧に詠まれています。
        また父に焦点を当てた連作が、どきっとしました。
        父親って娘からすると母親よりも遠くて、けれどもちろん血縁関係ですしずっと見守ってきてくれた存在だからこその信頼と鬱屈みたいなものがあるのかなと思うのですけれど、父に対しても適切に距離をとって詠んでいます。無暗に遠ざけるわけではなく、情というか、哀憫みたいなものも感じるような。どうかな。




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        まひる野 2017年8月詠草

        2017.08.02 Wednesday 22:45
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          「旭山動物園にて」 塚田千束

          喉太き鴉一羽があかあかと空に突き刺すやうな嘴
          あの檻のなかにたしかに生活がありむつとする生の臭ひよ
          あざやかな羽をしづかに零しつつ孔雀おまへは誰を愛すか
          美しき流線形を潜ませてペンギンくちを閉ぢて佇む
          ときどきは逢ひたくなると氷噛むポケツトに小石忍ばせ歩く


          ***

          7月号の素描by北山さんと今月号の北海道支部の詠草を読むと、
          五月のヘペレ合宿の全貌が明らかになるかもしれません(適当なことを)


          三人の少女の視線カタクリの群落に吹く風にゆらり揺れ 矢澤保

          かたくりは頭を垂れて木漏日に「きれい、きれい」を聞く山の耳 佐巻理奈子

          「馬に草あげるの、好き」と馬のいない芝生で矢澤さんがつぶやく 北山あさひ

          矢澤さんも晴れ男だと知らされて気分も晴れだアクセルを踏む 広澤治子



          またぜひ合宿しましょう。


          ***

          まひる野賞発表の号でした。

          大内子さんの「メビウスの道」は夫の介護を詠んだ連作。


          錆色のやうなるさびしさの夫の眼に目薬おとす

          目も耳も鼻も口はもある石を掌にとりて見る潮騒の海

          車いす押されて戻る下向きの夫にさくらの花ふぶきせよ

          抱きゐる思ひ価値観それぞれにメビウスの道ゆくのかわれら


          認知症? 四肢の動きが悪そう、脳梗塞後? などとぼんやり考えていたら、
          講評でパーキンソン病を患ってらっしゃるとわかり、もう一度読み直してああなるほどと納得しました。
          手足の動きや歩行が硬くぎこちなくなって、表情も乏しくなり言葉もすらすらでてこなくなる。
          身体のうごきが滑らかではなくなってしまう、そういう状態で、ご本人はもちろんいままで一緒に暮らしてきた方からみたら、なんてもどかしく、つらい病気でしょう。

          連作の中では派手に悲嘆にくれたりおこったり、そういうのはありません。
          ただ冷静に、腹をもはやくくって詠んでいらっしゃるのでしょうか。
          長年連れ添ってきたからこその優しいあたたかい眼差しが感じられます。

          もう一作はマチエールの浅井美也子さんの「しまいゆく夏」
          こちらは子育てを詠んだもので、あーわかるわかる、と勝手に頷いてしまいました。

          足たかく掲げねがえりする吾児のえがく半円きょうから夏だ

          湯船には小さき波のさや揺れて言の刃で児を傷つけており

          染みだして滴りおちて知らぬ間に溜まりゆく澱 母にならねば



          引用した一首目のようにあかるい児の成長をよろこぶような歌もありますが、
          むしろ目にとまったのは二首目、三首目のような、育児の中で知ってしまう自分の中の暗い面を気負わず誤魔化さず詠んでいる歌たちでした。
          言葉にしてしまうとはっとさせられる、冷静になってしまう、そうなると「母性」ってなんだかまやかしの幻想みたいな気がしてくる。






          私はいま子育て中で、子供に関する話題や歌に敏感なくせに、自分ではあまり詠めないままです。
          それははまだ、そこまで、自分の暗い部分を直視できないからだと、わかっています。
          もっと真摯にならないとなあ。



          今月もがんばります。
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          2017年6月読書録

          2017.07.23 Sunday 22:18
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            「やさしいぴあの」 嶋田さくらこ 仲直りしてあげるから買ってきて雪のにおいのアイスクリーム
            「ST 警視庁科学特捜班」 今野敏 みんな癖が強いな〜!
            「ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人」 今野敏 テトロドトキシンってあたりでちょっとネタが見えてしまった
            「ST 警視庁科学特捜班 黒いモスクワ」 今野敏 黒崎さんすごい
            「ST 警視庁科学特捜班 青の調査ファイル」 今野敏 心霊テレビの話
            「ST 警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル」 今野敏 大学病院の体制に切り込んでいくはなし
            「センティメンタル・ブルー」 篠田真由美
            「バチカン奇跡調査官 黒の学院」 藤木稟
            「バチカン奇跡調査官 サタンの裁き」 藤木稟


            みごとにミステリばかりですね。
            麻生さんの「水神」をこれから読みます。


            漫画
            「ゴールデンカムイ」 野田サトル 日露戦争帰りの軍人とアイヌの少女が金塊を求めて囚人たちと闘ったり野山に分け入りうさぎやりすを食べるはなし。面白いです。
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            まひる野 2017年7月詠草

            2017.07.23 Sunday 22:03
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              履き捨てるオムツ一枚いちまいに名前を書きて更ける真夜中
              園庭に小さきあたまひしめきて気が遠くなるほどの銀河だ
              励ましの言葉呟く母が在りすぐ口真似をする一歳児
              子を預けはたらくことの愚かさを責められてゐるやうな明け方
              長白衣袖を通してかさつきし手を今朝もまたさしだすのだらう


              ***

              どんなタイトルだったんですか、とヘペレのときに聞いてもらえたのにさっぱりおぼえていなかったという。
              確認しましたら、「流れ星まっすぐ」で出してました。
              朗らかに手をさしだして流れ星まっすぐ落ちて来よ春の宵
              という歌を出したのですが、落とされたので無題です。


              ***

              この時期けっこう日常に追われていてしんどくて、
              こう、愚痴のような歌になってしまって反省しています。


              ***

              ヘペレに参加してきました。久々です。
              前回同様、仕事にかこつけての参加。

              詠草について意見を交換したり、直接目の前で評をしていただけたり、
              刺激的です。
              来月もがんばろう。


              ***

              仕事がいそがしくて滅入ってます。
              沖縄料理の写真を見返して頑張ろうと思います。


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              2017年5月の読書録

              2017.06.18 Sunday 05:54
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                あまり読めていません。


                「じゃあきみがすき」 ヨシタケシンスケ ほっこりする
                「ダブル・ジョーカー」 柳広司
                「ピース降る」 田丸まひる ほろほろと生き延びてきて風を抱くきみの感情のすべてが好きだ
                「涙香迷宮」 竹本健治 圧巻のいろは歌。このミス2016年1位。
                「ぼくのニセモノをつくるには」 ヨシタケシンスケ アイデンティティのはなし
                「たましいのいちばんおいしいところ」 谷川俊太郎
                「死神さんとアヒルさん」 ヴォルフ・エアルブルック 死についての絵本
                「結局できずじまい」 ヨシタケシンスケ 自分ができないことについてのエッセイ
                「しゃばけ漫画 仁吉の段」 高橋留美子ら   
                「しゃばけ漫画 佐助の段」 萩尾望都、雲田はるこら

                「ミステリ国の人々」 有栖川有栖 ミステリの登場人物などのエッセイ


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                人魚 染野太朗

                2017.06.03 Saturday 14:15
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                  「人魚」 染野太朗 KADOKAWA

                  染野太朗氏第二歌集。

                  まずは十首選。(めちゃくちゃ悩みました)

                  早さではなくて想いがほしいのだが 欲とは初夏の水に似ている

                  思いきり息を吸い込みこの肺の小さきことを冷たきことを

                  夕焼けに手を振るような恥ずかしさ君が欲しいと強く思えば

                  尾鰭つかみ人魚を掲ぐ 死ののちも眼は濡れながらぼくを映さず

                  海を見に行きたかったなよろこびも怒りも捨てて君だけ連れて

                  カーテンが冬のひかりを溜めていく ことばにならぬ感情はない

                  唐揚げと昆布巻きひとつずつのこる食卓 苦しいな家族は

                  好きなものを好きと言えないわたくしを仏像として拝んでほしい

                  夕空がぼくよりぼくであることのふいにあふれてきたりあなたは

                  消えざれば声にはあらず まだだ、まだ足りない、と声 火のように声



                  6章からなる読みごたえのある一冊です。

                  恋人とのこと、教師としての仕事のこと、歌人としての仕事のこと、両親のこと。
                  様々なテーマがときに息苦しいほど迫ってきます。

                  実体験と密になった描写、たとえば上記の二首目のように肺の小ささを呼吸で感じたり、
                  コーヒーのグラスを覆う水滴の海の記憶に指は冷えたり とグラスの水から海を連想したり。
                  読み手に伝わるダイレクトさがあります。

                  上記の三首目、九首目のような、感情の高ぶりをどこか客観的に見ているような、自分を突き放しているような歌も目立ちます。

                  家族に対する混沌とした感情は、誰しも経験があるのでしょう、特に血のつながりのある相手に対しての愛情と鬱陶しさが、読んでいて苦しい。まるで自分のことのように思えてしまいました。

                  震災のときの歌も前半に目立ちます。
                  生徒と非難しながら、やはりどこか客観的に自分たちを批判・非難しているようなところだったり、なんだろう、シニカル? 自分を甘やかさない方なのかなあ。

                  結局人魚ってなんなのかなあ。

                  全体を通して、靴両呂気になります。なんだろう、こう、むずかしい。

                  うーんうまくいえない。
                  また後で書きなおしにきたいですが、ひとまずたたき台として。




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                  まひる野 2017年6月詠草と感想

                  2017.06.02 Friday 20:21
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                    「断崖」 塚田千束

                    崖に立つ後ろ姿を何度でもひとり眺める醒めない夢に
                    煙草挟む指がかすかにうごめきて灰はこの世にふりつもる業
                    張り詰めし鼓膜を破るわたくしは光だと言つたら笑ふか彼は
                    深々と世界の息を吸い込みてキーを叩きて君を殺める
                    重なつた道はもうなく今ここで手をふるだけのあざやかな空


                    ***

                    これを提出したとき、ちょうどドラマ火村英生の推理全10話+特典ショートストーリー二本を見終わった直後で、
                    頭の中が火村英生でいっぱいでした。
                    ははは。


                    ***

                    知っていても誰も言わない 夜の闇に沈んでしまった手の震え他 /今井恵子
                    彼も彼も善き人なれば明るすぎて誰を信じて良いかわからず
                      

                    孤独感。
                    たくさんの情報に、人に囲まれていながら誰を信じていいかわからないという心細さ。
                    結局信じられるのは自分の見たもの聞いたものだけだと思うのですが、それすらあやうくかんじる。

                    ***

                    皆ゐなくなつてしまへばしんしんと洞のやうなる花の樹の下 /麻生由美

                    この連作好きです。
                    日常に入り込んでくるどこか幻想的な風景が、春だからなのでしょうか、茫洋とさせられる。
                    花の洞、というタイトルもとても好きです。


                    ***

                    髪の毛を輪ゴムで結ぶそれだけの反骨ずっと面倒くさい /北山あさひ

                    北山さんの歌は北山さんだなあとわかる、強さがあってかっこいい。
                    わざと悪ぶってる?ぶっきらぼうに言いすててる?ようにも感じるのですが、どうなのかな。

                    ***

                    まるくなり君に抱かれる 生んでよわたしをしろい心にしてよ  /立花開

                    女性らしいな、と思った連作。リップクリームの歌もマネキンの歌も、どことなく湿った温度を感じます。

                    ***

                    転生を信じる少女のまなざしに地下鉄の窓で今朝も出会うよ  /左巻理奈子

                    地下鉄に揺られながら窓に映った少女のまなざし、というのは、これは自身のことだと読みました。
                    左巻さんの歌は、以前の「ほのぼのと老いる」の歌にもありますが、
                    なにげない日常から自然に非日常が浮かび上がってきて、
                    こういう視点が本当すてき。


                    ***


                    ざっとながめていて受診の歌、闘病の歌、離別の歌がとても気になります。
                    私から見えないサイドで起こっているのであろう感情の動きに、はっとさせられる。

                    ***

                    今日は一時間説得してきました。
                    喉がかわく。


                    ***


                    また今月もがんばります。

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                    ピース降る

                    2017.05.27 Saturday 09:23
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                      「ピース降る」 田丸まひる 書肆侃侃房


                      「硝子のボレット」につづく、田丸さんの第三歌集です。
                      表紙には赤紫、ピンク、白の花びらをまとった少女たちが三人。
                      まるで羽のように花弁をまとわせて、でも飛んでいくわけではなくてしっかり地面に足をついている。
                      印象的な絵です。

                      「硝子のボレット」は痛みと少女性、家族への希求が強く意識させられたのですが、
                      「ピース降る」は、もうひとつ階段をのぼった女性の歌のように感じました。
                      痛みを痛みとしてそのまま提示するのではなく、修辞に、季節に、風に、雨に隠して、託しているような。

                      手ざわりを理由に選ぶあたらしい便箋 言えば言うほど遠い
                      言い訳のところどころの関節が軋むつめたい夜のブランコ
                      泣きながらうつむくときの首の骨 なんて小さな獣だろうか
                      ほろほろと生き延びてきて風を抱くきみの感情のすべてが好きだ
                      感情を青いスピンに預けたら冬のあなたを先に見送る



                      恋人との関係も、痛みよりもやわらかさ、安心を感じさせるものが好きになりました。

                      胸骨にくちをつければ笑い出すきみが片手で飲むvolvic
                      それなりのほどよい孤独ひとつずつふたりの夜の釦を外す


                      些細な部分、ちいさな感傷を見逃さない田丸さんの目がすきです。

                      ゆるされることよりずっと快感と知ってゆるしたことがあります
                      言い訳をするときいつもひんやりとシンクにもたれたがるばかもの
                      祈りとは家族映画に怯むときゆびのすき間に挟まれるゆび
                      聴覚がほろびるような気だるさを沈めて遠い夏の浴槽
                      夏痩せのつめたい膝にふれられるふたり暮らしの小さな柩
                      わたしより先に死ぬって決めているあなたが先に冬になりゆく



                      職業詠とおもわれる連作『かなしみは咀嚼できるのとか、知らない』
                      二重扉、鍵、精神科病棟独特の空気を感じる。

                      いくつかの冬をあなたと呼吸する 死にたいひとを殺せないまま




                      『あすを生きるための歌』という自由詩(短歌と詩が混合している)も、田丸さんのきもちがまっすぐ提示されているようで、繰り返し読んでしまいます。

                      かわいくないいのちなんてないよ 

                      そう言い切ってほしい。



                      でも風が吹く あなたからいただいた手紙をさらりさらりとめくり




                      ぺんぎんぱんつもそのうち感想かきたいです〜。おしゃれ!

                      category: ├  短歌 | by:千束comments(0) | - | -

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